『白鳥とコウモリ』|ブッヒーの映画感想

映画

鑑賞日:2026年9月7日
鑑賞環境:映画館

※この記事は『白鳥とコウモリ』のネタバレを含みます。

🐷 ブッヒー評価

項目 評価
総合 ★★☆☆☆ 2.5
内容 ★★★★☆ 4.0
音楽 ★★★★☆ 4.5
構成 ★★☆☆☆ 2.0
この記事でわかること
  • 『白鳥とコウモリ』を観た率直な感想と評価
  • 被害者遺族と加害者家族の関係性に感じた大きな違和感
  • 松村北斗・今田美桜の演技と、網守将平の音楽について

東野圭吾の同名小説を、松村北斗さんと今田美桜さんのW主演で映画化した『白鳥とコウモリ』。

善良な弁護士・白石健介が殺害され、倉木達郎という男が犯行を自供する。これで事件は解決したはずだったが、倉木の息子・和真と、殺害された白石の娘・美令は、それぞれ自分の父親の言動に違和感を抱く。

「なぜ父は人を殺したのか」「なぜ父は殺されたのか」。

本来なら交わるはずのない加害者側と被害者側の二人が一緒に事件を遡り、真相を追っていくサスペンスだ。

ストーリーの軸はかなり好きだった。真相へたどり着くまでのサスペンスとしても素晴らしかったと思う。

それでも総合評価は2.5。理由ははっきりしている。途中から、この二人の関係性に引いてしまった。

被害者の娘と加害者の息子が真相を追う。そこまでは良かった

犯人が分かって終わるのではなく、その後に残された被害者遺族と加害者家族を描く。この作品の設定そのものは面白い。

加害者の息子である和真と被害者の娘である美令が、それぞれ自分の父親に疑問を持つ。立場としては正反対の二人だけど、「本当のことを知りたい」という一点では一致している。

だから二人が関わること自体は分かるし、むしろそこがこの物語の面白さだった。

過去を調べ、事件の真相に少しずつ近づいていくサスペンス部分も良かった。真相そのものを知った瞬間にものすごく驚いたというより、そこへ至るまでの過程に引き込まれた映画だった。

ただ、二人で新幹線に乗って名古屋まで過去を調べに行くあたりから、「被害者の娘と加害者の息子が、ここまで一緒に行動するものなのかな」という違和感は少しずつあった。

それでも真相を追うためなら、まだ分かる。問題はその先だった。

なんで恋愛感情に持っていくの?

名古屋から帰る新幹線で、二人が自然と手をつなぎそうになる。ここで正直、引いた。

自分が見たかったのは、被害者遺族と加害者家族という非常に難しい立場にいる二人が、一緒に真相を追った先で何を感じるのかだった。恋愛ではなく、普通の友人とも恋人とも違う、この二人にしか生まれない複雑な関係だからこそ描く意味があると思っていた。

それなのに、そこを恋愛感情のようなものに持っていったことで、それまでギリギリ保たれていた自分の中のリアリティが一気に下がった。

さらに最後は事件解決から1年後。あのとき手をつないだことが忘れられないという感情を残したまま、二人が再び会う。

本当にありえないと思ったし、率直に言って気持ち悪かった。

被害者側と加害者側が関わることには、この物語だからこその意味がある。でも、その関係を最後に恋愛へ寄せる必要があったのか。自分には最後まで理解できなかった。

松村北斗と今田美桜は良かった

一方で、松村北斗さんと今田美桜さんの演技は良かった。

松村北斗さん演じる和真は、本当に普通の会社員という素朴さがある。そこから突然、父親が殺人事件の容疑者となり、自分自身も「加害者の家族」という立場に置かれる。その戸惑いはしっかり伝わってきた。

ただ、演出として気になったところもある。

突然人生がひっくり返り、家の周りには野次馬まで押しかけている。それなのに朝起きられないほど寝ていて、起きたら家の周りが大変なことになっている。

寝れるんかい!

そこはちょっと矛盾を感じてしまった。

今田美桜さんも良かった。もともと非常に華やかな印象のある人なのに、朝ドラなどを見ていても感じるように、役によってその華やかさをちゃんと落とせるのがすごい。

今回は被害者遺族としての重さを持ちながら、それでも真相を知ろうと動き続ける。その行動力のエネルギーを感じた。

二人の演技が悪かったから関係性に違和感を持ったわけではない。むしろ演技が良かっただけに、最後に恋愛感情へ持っていった脚本・演出の方向性が自分には合わなかった。

音楽はかなり良かった。網守将平という作曲家を知った

そして、この映画でかなり良かったのが音楽。

音楽を担当しているのは網守将平さん。

自分は今回初めて名前を意識した作曲家だったけど、登場人物の感情が動く場面でBGMが本当によくハマっていた。

感情の機微に合わせて音楽が入ってくる感覚があって、映画を観ながらかなり印象に残った。

自分の中では、福澤克雄監督の作品における千住明さんの音楽に近い感覚があった。作品そのものとは別に、音楽が登場人物の感情をもう一段引き上げてくれるような感じ。

調べてみると、網守将平さんは『8番出口』や『サンセット・サンライズ』などの音楽も担当している。

今回は映画そのものより、むしろ「網守将平」という作曲家を知れたことが一つの収穫だった。

内容は4。でも総合は2.5

過去と現代を行ったり来たりしながら真相へ近づいていく構成は、この物語を描く以上ある程度仕方がないと思う。

ただ、もともとの上映時間も長く、それ以上に体感時間が長かった。

それでも事件の真相を追っている間は面白かったし、ストーリーの軸自体は好きだった。だから内容は4をつけた。

音楽も4.5。松村北斗さんと今田美桜さんの演技も良かった。

それなのに総合は2.5。

結局、自分の中では被害者の娘と加害者の息子に恋愛感情を持たせたことが、それくらい大きかった。

二人が真相を追うことで生まれた特殊な関係性を、そのまま特殊な関係として終わらせてほしかった。

恋愛にしなくていい。

本当に、そこだけは最後まで受け入れられなかった。

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